2010年5月1日土曜日

動き出すもの、静止するもの


4月は、始まりの季節。雪解けや桜の咲く季節と重なっているためか、日本人はこの季節に、特別のエネルギーを感じるものだ。
大都市を中心に、建築現場が一斉に動き出すのもこの時期。「期が変わる」前と後では、わずかな時間の差であっても、まったく状況が違う。
写真は、第一京浜(国道15号)沿い品川駅近くの再開発の模様だ。かつては大手企業の社員寮があった土地を、東京都が買い取って新たな拠点を作ろうとしている。着工が4月、竣工が8月と表示されている。まだ基礎工事すら終わっていないようだが、現場は活気に満ちている。
再開発という言葉には、昔、政治や利権がらみのダーティなイメージがあった。幹線道路や鉄道などの基幹工事につきものの区画整理や、ダムなどのインフラが絡んでいたからだろう。現在は、都市機能を発展させるためのてこ入れ、という大義に、一般人のイメージも落ち着いている。
ここからわずか数百メートルの距離に、かつて話題になった京品ホテルがある。営業停止措置を強制執行されてから1年が経過した今、現場はフリーズしたままだ。
ホテルの入り口にはベニヤ板が貼られ、窓には目隠しなのかスプレー状の塗装跡がある。看板の類すら、外されることなく残っている。
不当解雇、と憤ったかつての従業員の方々は、裁判に持ち込んだ案件のいくつかで、今年1月に勝訴した。しかし、土地と建物は破産管財人扱いのまま、どう運営されるのか決まってないようだ。
品川駅の目前に凍る行き場のない、静止を続ける建物。通行人の目に止まることすらない。
かつては、ビジネスマンに重宝されたホテルだった。つくりは古いが、風情があった。地の利がいいので、仕事で使わせてもらったこともある。どんどん進む品川再開発のヘソの部分で、いつまで静止を続けるのだろうか。
Midori