2010年4月29日木曜日

現場取材雑記_4

今までお世話になったプロカメラマンの一人に、若手ながら素晴らしい方がいる。
初めての撮影現場に、彼はご自身が所有するステップワゴンに、あらゆる器材を満載してやってきた。カメラ2機、ストロボ、レンズ、露出計その他の詰まったバッグ、三脚、レフ板を抱えて、室温40℃近傍の現場に入り、一人で絵作りをしてくれたのだ。機械設備が吐き出す大轟音と熱、蒸気、限られた時間を前に、淡々とにこやかに構図を決める。シャッターを切る前に、試し撮りの絵を必ず見せてから本番に入る。被写体となる人の気持ちを盛り上げることも忘れない。大轟音の現場をバックに並んだ現場のスタッフは、その仏頂面を、カメラマンである彼の「はい、チーズ!」の一言で、思わずほころばせたのだ。
「プロだ…」と唸るのみだ。実際、彼ほど柔軟で、機転が利き、一緒に仕事をして楽しい方はいなかった。私は相変わらず、素人写真しか撮れないが、最低限必要な絵作りのコツを、彼からたくさん学んだ。お支払いできるギャラの額を、はるかに超えた貢献をしてくれたのだ。
残念ながら、一緒に取材の成果を発表できる場となっていた雑誌は休刊となった。
だが、「製造現場の絵本を作ろう」という考えに賛同してくれた彼と、新しい絵本を作る機会を絶対に作るつもりだ。
製造現場は美しい。その想いが共有できる方と、奇跡のように出会た。
Midori

0 件のコメント:

コメントを投稿