2010年4月15日木曜日

研究者とビジネス

写真は本文とは関係ありません。

大切にしてきたグループがある。約20年にわたって、つながってきた研究者の方々だ。
つながり始めた当時は、皆若かった。その分野全体にエネルギーが満ち溢れ、仕事が次々に押し寄せ、20代の若手研究者も寸暇を惜しんで研究に没頭していた。
彼らは、製造プロセスの研究者だ。どこよりも高品質な製品を、どの競合よりも早く作るための技術を研究するのが仕事だ。成果が会社の命運を左右するから、1分1秒も惜しい。
いつしか彼らは、インフォーマルミーティングを催し、競合や上下関係をとっぱらった情報交換の形を自然に作っていった。会社人であるから、自社に不利益なことはできない。しかし、皆不思議なほど、お互いの研究内容や、考えを知っていた。
無邪気な私(当時)は、ある若手に聞いてみた。「なぜこれほどオープンにお話できるんでしょう」。
答は「学会で発表された内容がベースになっているだけ。皆、想像でしゃべってる」。
驚愕した。とても想像でしゃべっているとは思えない内容だったからだ。
何より、国際学会でパブリッシュされた内容は、殆どロスタイムなしに、皆が把握していることに驚いた。
研究とビジネスのバランスイメージは、私の頭の中に、決定的に出来上がった。

時間が経過し、研究者たちの仕事の形も変わった。
当時の若手は、業界の重鎮と言われるようになった。
しかし重鎮になった彼らは、相変わらず顔を合わせると、グラスを片手に合成ポリマーの話などしている。
彼らにとって、研究する環境に身を置き、最先端の情報を把握するのは、会社人であることを超え、空気を吸うように自然なことなのだ。
Midori

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